【レビューNo.1843】入門 米中経済戦争
入門 米中経済戦争
評価★★★★
昨年のコロナ禍のあたりから、にわかに嫌中派に転じた野口悠紀雄先生の近著。
そう言えばそのコロナ禍の最中に書かれた「中国が世界を撹乱する」は、もともと米中対立についての執筆を急遽変更したと書いておられたので、一年越しの予定されてた原稿の発刊なのだろう。
今回もKindleでの読書となったが、山のようにハイライトするところが出てきた。一言で言えば、AIとビッグデータの活用で中国において「デジタル共産主義」あるいは「デジタル・レーニン主義」(いずれも著者の造語)が生まれようとしているのだ。すなわち「第2次文化大革命」(著者の造語)とでも言うべき大転換が中国で起きつつあると著者は警告する。そして対立を仕掛ける米国ではなく、影響を受けるのは著者の見立てでは日韓豪であり、欧米の受ける影響はさほどでも無いと言う。
また、人口統計から長期的な中国の(ないし世界の)予測を試みているがこの内容も興味深い。ただ、かつて橘令氏が著書で警告した内容よりは、楽観的(危機が起きるのが先と予測している点で)の様にも感じた。