【レビューNo.1698】Tannhaeuser
評価★★★ 評者は大学時代に大学の合唱団に所属していた。偶然、4年の卒業時の春休みに、エキストラとして二期会のオペラ出演のお話があった。その時の演目がこのワグナー「タンホイザー」である。したがって、本曲の最初から最後まで評者の頭の中に(あの分厚いスコアで何十日も稽古したのだから当たり前だが)、叩き込まれている。 残念ながら本演目の動画記録はあまり恵まれていないようだ。近所の図書館に シノーポリ版 (実はこの版でタイトルロールを歌っているリチャード・ヴァーサールが上記の二期会上演の際には来日、よって本物を稽古の時から評者は見てはいた)が所蔵されているが、あまりに前衛的な演出に嫌気がさしていたので、Amazonで評価の高い本盤に期待して購入したのだが、本盤も負けず劣らずの前衛的演出。冒頭部分はテレビでは放映不能であろう。 タイトルロールを歌うヴェンコフはあまり聞いた記憶のない歌い手だが、可もなく不可もなくか。やはりワグナー歌いとしてルネ・コロは空前絶後のヘルデンテノールであったと認識を新たにした。領主役のハンズ・ゾーテイン、ヴォルフラム役のベルント・ヴァイクルはまだまだ若い時期だったようだが、この頃から十八番役だったか。ヴェーヌスとエリザベートを同じ歌手が歌うという演出だが、人間には二面性があるということの問いかけか? 決して本盤は悪くはないが、やはり本演目の完璧な動画記録はいまだ存在しないようであることが確認できるだろう(カラヤン指揮版の録画が残って欲しかった)。