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【レビュー№1705】戦後経済史

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評価★★★★ 著者がしばしば言及する1940年体制史観の集大成。本書は著者自身が4歳の時に体験した東京大空襲(著者の家族は遠方への退避が叶わず、からくも最後の最後に死を覚悟して防空壕に逃げ込みかろうじて生き延びるが、同じ防空壕に先に逃げ込んだ人の多くは酸欠で死亡していたそうだ)のシーンから始まるが、あたかも昨日のことであったかのように明瞭な文章で書かれており圧倒される。東京大空襲から小泉政権までのことが本書の守備範囲だが、小泉政権については切って捨てるかのようにほとんど成果が無かったと断じている。このようなことが書けるのは、著者をおいて他にはいないだろう。著者が幼少から学生時代、大蔵省の官僚時代、学者時代に実際に体験したことと史実とかがパラレルで展開しており著者の意図(まえがきに書いてあるが)に反して、読み物として非常に面白い(事実上の著者の自叙伝となっている)。昭和も遠くなり平成もあと数日で終わるが、来る令和の時代を無にしないようにとの著者の悲痛な願いが全文から伝わってきた。