投稿

4月 18, 2021の投稿を表示しています

【レビュー№1785】極超音速ミサイル入門

イメージ
  極超音速ミサイル入門 評価★★★ フジテレビで長く安全保障問題を専門とした報道に携わり、昨今はTwitterでも積極的に発信されている著者による極超音速ミサイルに関する入門書といった位置付けか。同じくTwitterのミリタリー分野でお馴染みの岡部いさく氏の手書き解説画が時折添えられており、緊迫した内容なのに、なぜかほっこりする気がするのはご愛嬌か。 野口悠紀雄氏も著書で指摘していたが、やはり極超音速ミサイル開発に於いて中国は先手を取っており米国は遅れを取っているようだ。 厄介なのは著者は敢えて強調してない様だが、現時点の極超音速ミサイルの射程は日本列島には達しているが、米国本土には及んでいないことだろう。ひと頃の北朝鮮の弾道ミサイル問題と似た構図が、核兵器保有国である中国との間で起きつつあることは非常に気がかりである。

【レビュー№1784】北海道の鉄道旅大図鑑

イメージ
 北海道の鉄道旅大図鑑 評価★★★ 鉄道を趣味の一つとしているはずの評者にとって、実は北海道の鉄路はほぼ未知の世界である。わずかに35年くらい前の学生時代に、青函連絡船(死語の世界はある #丹羽哲郎 )に乗って函館を訪れ、夜行の普通列車の函館発札幌行き(DD51牽引の旧型客車列車であったと記憶する)に乗ったのが唯一の経験だろうか?だから、本書に載っている様な、大平原や大湿原や大雪原の中を走る列車の中から車窓を楽しんだという記憶がないwww 読むと明日にでも飛行機か函館まで繋がった新幹線に乗って行ってみたくなる気になる魅力は、間違いなく北海道の鉄路には感じられる。やはり、本州や我が実家の九州ではこの風景は体験できないだろう。 それにしても、見てて気になるのが、北海道の鉄道の疲弊具合だ。往年の路線図を知る身としては、毛細血管が消失して骨格しか残ってない様に見えた路線図。車両も札幌を中心とした電車以外はおしなべて経年劣化(ようやくキハ40後継の電気式気動車が投入開始された様だが)。 一時はJR東日本との一体化ないし支援なども囁かれていた気がするが、コロナによりその東日本も屋台骨がぐらついている。 この本は見て楽しい本ではあるが、少し JR 北海道のことが心配になる気がしてくるのは、評者だけなのだろうか。

【レビュー№1783】八月十五日に吹く風

イメージ
八月十五日に吹く風 評価★★★★★ 前から申し上げている様に、評者が愛してやまない戦争映画として 東宝の「太平洋奇跡の作戦キスカ」 があるのだが、まさかこの時代に「 キスカ島撤収作戦 」が歴史小説として描かれるとは!数ヶ月前にひょんなことから本書の存在を知った時は大きな驚きを感じたが、読んだ後のいまはただただ作者に対して感謝の言葉しか無い。最後の数章あたりは号泣しながら読んでいたことを、告白しておこう。 評者は全く知らなかったのだが、作者は累計販売部数1000万部を超える売れっ子作家だそうで、既に綾瀬はるか主演による映画化、北川景子主演によるドラマ化がなされた作品もあるそうだ。 そんな作者が歴史小説を書き始めたのはごく最近のことの様で、この作品の前には義和団事件を描いた「黄砂の篭城」という作品があるそうだが、事実上2作目の歴史小説のテーマになぜあまり一般には知られてない「 キスカ島撤収作戦 」を選んだのかは大いなる謎だ。が、評者と歳格好の変わらない作者のことだから、子供の頃にテレビの洋画劇場で放映されていた 映画「太平洋奇跡の作戦キスカ」 を見て、いつかはあれを小説にしたいと密かに思い描いていたのでは無いのだろうか?そうとしか思えないほど、本作は登場する膨大な数に登るそれぞれの人物の心の内面に至るまでの描かれ方が深く、作者のこの作品にかける気迫とでもいう「風」を読んでいて感じるのだ。 ネタバレを避けるため、作品内容には細かくは言及しないが、米軍側の思わぬ「大物文化人」の本作戦への関与、映画では描かれなかった軽巡洋艦阿武隈に乗艦した「従軍記者」が実はキーマン(おそらくは本作執筆にかかる、新たな情報提供者なのだろう)であること、悲惨なアッツ玉砕の描写等々、上げればキリがないが、各章ごとの場面転換も絶妙であたかも映画かテレビドラマを見ているような錯覚に陥り、読者を飽きさせることがない。 本作に描かれていることが事実だとすれば「戦後」に関わるある「重大な決定」のきっかけが、実は「キスカ島撤収作戦」だと言うことになる。ぜひ歴史家の方にも検証頂きたいところだ。