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10月 6, 2018の投稿を表示しています

【レビューNo.1686】仮想通貨はどうなるか

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評価★★★★ 怒涛の様に出版ラッシュが続く野口悠紀雄先生であるが、今回はこのところのお得意分野である仮想通貨界隈の近況解説本。御年 78 歳の先生がかような先端分野に造詣が深いことに毎度のことながら頭が下がる。評者の様な文系頭にもわかりやすく解説いただけるのでまことにありがたいことこの上ない。 今回意外だったのはメガバンが始めた仮想通貨について先生が高い評価をされていたことだ。これがうまくいけば、一気に日本が仮想通貨の分野でリードを取ることも可能だと仰る。 逆にそうでなければ、他のページで触れておられる様に異様なスピードでこの分野を爆速する中国に、占領されてしまうことも覚悟しなければならないのだろう。

【レビューNo.1685】週刊東洋経済 2018年10/6号 [雑誌] (相続が変わる)

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評価★★★ 先週の銀行特集に続いて今週は相続特集と評者的には珍しく二週連続週刊東洋経済を買う羽目になった。 中心テーマは民法改正のところだが、なかなかこの話を素人にもわかりやすく書いてある記事に出会えない。今回の特集も色々図表を駆使してるのだが、一般の方が記事と図表を読み比べながら読んでもなかなか理解が難しいだろう。 それにしても、今回の相続にかかる民法改正、税法の方がどういう対応になるか今ひとつ不鮮明(例えば配偶者居住権)なので、個人的には今ひとつまだ盛り上がらない。但し、業としてこの様な分野の相談を受ける人は当然に知っておかねばならない内容だろう。

【レビューNo.1684】顧問税理士も知っておきたい 相続手続・書類収集の実務マニュアル(第2版)

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評価★★★★ 前回の第一版 も高く評価させて頂いていたが、知らぬ間に第二版が出ていたので拝見した。ちなみに第一般は8刷まで行ったとのことで、この手の相続の専門書で個人の税理士の方が書いておられる本としては極めて異例のことだろう。 今回の第二版も相続のアドバイスを業としている人間として「まさに使える」一冊であることに変わりは無い。 開業している税理士向けに書かれた本なので、難解なところもあるかと思うが、この程度が理解できないと正しい相続対応は無理だろう。そういう意味で、信頼できる相談相手をいかに確保するかがこの手の問題では重要であることを改めて認識させられる。 今後も、適宜適切にアップデートされることを心の底からお祈りしたい。

【レビューNo.1683】週刊東洋経済 2018年9/29号

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評価★★★ 先日の週刊ダイヤモンドの不動産投資特集(と言いつつ実情はスルガ銀行叩き)に続いて、今度は週刊東洋経済で銀行特集である。 言わずもがな、現在注目を集めている地銀など地域金融機関についての記事が大半となっているが、冒頭はメガバンクのリテール大改革(と言ってもの既に報道されている既知のことばかりのようだが)が書かれているのがやや目を引くか。 先日のダイヤモンドに比べれば、スルガ銀行問題についての言及はやや控えめだが、その分かえって地域金融機関に対する書きぶりは辛口のようだ。新しい金融庁長官のインタビューでは、前職が監督局長だったことからインタビュアーが長官にもスルガ銀行問題について責任があるのではないか?とストレートな問いをしているのには驚いたが、それへの回答は通り一遍のものであるのは致し方ないところか。 本号は、銀行業界以外の人が読んでも、まったく詰まらない特集だろう。

【レビューNo.1682】Strauss: Don Juan / Petrenko · Berliner Philharmoniker

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評価★★★★ いよいよペトレンコとベルリンフィルとの新しい時代が始まった。 デビューコンサートの曲目を知って、腰が抜けるほど驚いた。カラヤン・ベルリンフィル黄金期の鉄板レパートリーが用意されたからである。しかも、コンサートマスターは我らが樫本大進が起用されいやが上にも期待が高まる。 冒頭はカラヤンが最も得意とし数多くの録音を残したリヒャルト・シュトラウスのドンファン。気のせいか、団員たちの顔もラトルの時代と違って生き生きと感じられ、特にコンサートマスターの樫本大進は侍かの様な鬼神の表情でオケを引っ張っているのが嬉しい。複数回あるバイオリンソロの部分も完璧な演奏で期待に応えてくれた。ペトレンコらしさを感じるのは、曲の最終盤か。ゆったりとしたテンポを取る中に、あたかもオペラのワンシーンを思わせる雰囲気があり、さすがはバイロイトでワーグナー振る指揮者と感心した。 続く、同じくリヒャルト・シュトラウスの死と変容、ベートーベンの交響曲第 7 番と、非の打ち所がない演奏で、何故無名な彼がベルリンフィルに選ばれたのか疑問に思っていた我が身を恥じなければならないと告白しておこう。 終演後、奏者が全員引き上げても拍手は鳴り止まず、ひとりペトレンコが再び壇上に立ち上がるまで、聴衆が帰ることはなかった。

【レビューNo.1681】日本人だけがなぜ自衛隊の実力に気づかないのか?

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評価★★★★ 小学生まで日本に暮らした後、米陸軍の奨学金で大学卒業後軍務につき、一貫して米陸軍の日本語専門家として日米の現場レベル架け橋として尽力してきた著者による、日本国防分析の書。 著者は東日本大震災の際に横田基地に勤務していたことから、事実上トモダチ作戦の連絡将校の役割を担っていた様で、有名な仙台空港復旧作戦(特殊作戦機コンバットタロンの仙台空港強行着陸に始まる、おそらく米軍が唯一前面に出たトモダチ作戦)も彼のアイデアだった様だ(発案後 4 時間で作戦開始)。 現場レベルはきわめて鍛錬ができていて、装備も常に整備されている自衛隊を著者は高く評価する一方、東日本大震災などでも見られた決断の遅さを日本の欠点と指摘するのは、軍事だけにとどまらず広く日本人にとって耳の痛い話だろう。 後半は、北朝鮮問題が中心となっているが、著者の掴んでいた情報によれば、やはり本年初めにかけて、少なくとも複数回開戦寸前の状況にあった様だ。ただ、著者は米朝開戦が第三次世界大戦(具体的には虚をついてのロシアのウクライナ侵攻、中国の台湾侵攻)の引き金となりかねないと否定的である。 現時点では日本における現実的な脅威としてはミサイルだけだと客観的には分析される様であり、イージスショアをはじめとしたミサイル防衛強化は理にかなっていると著者は言う。つまり、米国に届く核は無い( ICBM は排除される)が、日韓に届く核は残るのが現実的な道筋の様だ。わかっていたとは言え、そういう時代をこれから我々は生きていかなければならないということは肝に命じておくべきだろう。