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8月 16, 2013の投稿を表示しています

【レビュー№1190】海軍乙事件

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海軍乙事件 (文春文庫) 評価★★★ 夏休みということで、このところそれらしき本の読書が続いているが前々から読もうと思っていた海軍乙事件をついに手に取った。 著者はこの手の歴史小説ものを書かせたら超一級の吉村昭氏。以前大震災の直後頃に氏の 関東大震災 を読んだのだが、その緻密な調査に裏打ちされた描写に舌を巻いたが、本書でもその技は遺憾なく発揮されている。ある時は自分が二式大艇に搭乗しているようであり、ある時はジャングルで行軍させられているようでもあり、ある時は軍令部で尋問されているようである。 ここであえて乙事件についての内容なり感想について書くことは避けるが、同じ本に収録されている海軍甲事件(山本五十六連合艦隊司令長官機撃墜事件)と併せ読むと、感慨深いものがある。

【レビュー№1189】「持たざる国」への道

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「持たざる国」への道 - 「あの戦争」と大日本帝国の破綻 (中公文庫) 評価★★★★ この時期になると誰しも考えるのが、「なぜ日本はあの戦争を始めてしまったのだろう?」という疑問だろう。そのことについての主として金融の面からの答えが本書であろう。 「たかが金の話」だと思わない方がいい。かつて 「日露戦争、資金調達の戦い」のレビュー にも書いたが、お金なかりせば戦争継続すらできないのだから。 読んでしまうと脱力してしまう話が多いのだけれども、あとがきに著者が書いているように、戦前の日本の金融政策は現在FEDが行っているQEの様なものであり、日本の戦前の金融史を知ることは、実は現下の金融経済を考える上でも有益であるという点は重要だ。 様々な意味において、この夏読むのに適した本かと思われる。