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【レビュー№1712】「雪風」に乗った少年

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評価★★★ 著者はわずか15歳で出征した「海軍特別少年兵」、偶然にも「幸運の雪風」こと駆逐艦雪風に配属となり、今日まで生き残ることとなったそうだ。「海軍特別少年兵」の一期生は60%以上が戦死されたそうだ。しかも、そもそもこの制度は「中長期的な視点により、艦艇の乗組員や陸戦部隊等における将来の中堅幹部を要請する」ものだったにも関わらず、、、、、、なにやら現代の社畜界隈でも通じそうな話である(なお、評者もごく最近その様な目にあっている)。 「海軍特別少年兵」は競争倍率10倍もの難関の志願兵制度だったという。にもかかわらず、教育中に自殺者が出てしまうほどのスパルタ教育。しかし著者は出征の際に母に言われた「死んではなにもならない、必ず生きて帰ってこい」との言葉を常に念じてきたという。 著者が「雪風」に乗艦したのは既に戦局が傾いたマリアナ沖海戦の頃からなのだが、この当時の「雪風」艦長(寺内正道少佐)がまた素晴らしい。氏は着任の時の挨拶で「俺がこの『雪風』に乗り組んだ以上、この船は絶対に沈ませない。だから心してみんな頑張ってくれ」と言ってのけるのだ。そして、この艦長の見事な操艦なかりせば大和特攻から生還することは無かったであろうことが、本書には書かれている。 著者は戦後復員せず、復員輸送艦の任に就いた雪風と最後まで運命を伴にするのだった。そう、最後台湾に戦利品として渡されるその日まで。 もはやこの時代のことを現実に語ってくれる方も残り少ないであろう。貴重な記録の書である。大和特攻含め、戦地に散った方に改めて合掌。