投稿

10月 2, 2010の投稿を表示しています

リバタリアニズムとコミュニタリアニズム

橘玲氏がサンデルについてコメントしたのでご紹介。 (以下全文引用) リバタリアニズムとコミュニタリアニズム : " 『残酷な世界~』が無事に出版できてすこし余裕ができたので、みなさまからのお問合せにお答えしたいと思います(遅くなってすみません) ▼タダシさんからのご質問 Q 『これからの「正義」の話をしよう』というリバタリアニズム的な話を扱った本が流行っていますが、この著者のスタンスについて橘さんはどういう感想をお持ちでしょうか? サンデル教授の本によって、日本でもリバタリアニズム(自由主義)、コミュニタリアニズム(共同体主義)、リベラリズム、功利主義という枠組で「正義」や政治哲学が語られるようになったのは素晴らしいことだと思います。それ以前は、「右翼」と「左翼」、「保守」と「革新」という骨董品のような道具立てしかなかったのですから。 『残酷な世界~』で「政治空間(愛情空間/友情空間)」と「貨幣空間」の話を書きましたが、コミュニタリアニズムは政治空間の論理(統治の倫理)、リバタリアニズムは貨幣空間の論理(市場の倫理)に相当します。 統治の倫理(武士道)と市場の倫理(商人道)はどちらが正しいというものではなく、いずれも社会や人生にとって大切な価値を提供してくれますが、水と油のように相反する原則で構成されています。そのため、政治空間と貨幣空間がぶつかる領域で「正義」をめぐる深刻な対立が生じます。 「正義」がゆらいでいるように見えるのは、貨幣空間が政治空間を侵食することで、統治の倫理が市場の倫理に置き換えられているからだと思います。 このことについては、いずれ機会があれば書いてみたいと思います。 Q リバタリアニズムに関する本は『不道徳教育』が一番だと私は思っているのですが、文庫本化する予定はないのでしょうか? 『不道徳経済学』とタイトルを変えて文庫化の予定です。いま、権利関係を調整してもらっています。 ▼工藤アキオさんからのご質問 Q 「マネーロンダリング」や「永遠の旅行者」のような最新の金融知識を盛り込んだハードボイルドな長編小説も今後書いて頂けないでしょうか。日々残酷な世界で生き延びなければならない時代だからこそ、正統派ヒーローの再登場を待っているファンの方々も結構いると存じます。 同じようなご要望をたくさんいただいています(ありがたいことです)。 準備は

日中の間、国の間

宋文洲さんのブログからご紹介 (以下全文引用) 日中の間、国の間 : "先週から東京に居ます。友人知人に会うと必ず領土問題について聞かれます。昨日、日経BP主催の経営者向けセミナーで講演しましたが、予定のテーマの前に「ぜひ触れて欲しい」と言われたのもこの問題です。 ロシア、インド、ベトナム・・・あの北朝鮮さえも中国と領土問題を抱えています。私にしてみれば領土問題はいわゆるお隣さんの証拠でもあるのです。この種の揉め事はよくありますが、ここまで拗れたのは確かに珍しいです。 実は、私は靖国神社の問題の時を思いました。あの頃、私はまだ北京に移住していないので生活のベースは東京でした。多い時には一日3、4回も講演に呼ばれていましたが、質問時間になるといつも「靖国についてどう思うか」と聞かれました。 はっきり言って疲れます。日中の間で生きてきた私ですが、何も思わない訳がありません。思うのですが、はっきり言ってその思いが揺れるうえ、自信もないのです。ちょっとでも気をつけないとすぐ「中国の肩を持つ」とか、やっぱり「中国人的発想だ」とかと言われるのです。 私は中国の政治家と過激派だけの話を信じないのですが、だからといって日本の政治家と過激派を信じる必要もどこにもないのです。自分の独自の方法で事実を調べたいのですが、不可能です。だから本音はどうでもいいと思ってしまうのです。 この原稿を書いている時にテレビに前原大臣が昔の人民日報を出して「日本の領土だと認めた」と言いましたが、先々週の中国のテレビでは著名学者が昔の日本地図を出して「中国の領土と書いた」と言いました。どちらを信じるかは問題ではなく、どちらの国民も一部の情報にしか触れず、相手の主張の詳細を知らないのです(興味がない)。企業間のトラブルも同じです。まずい結果が出ると全部部下や相手のせいにしてしまいたいのは無能無責任の管理職です。 領土問題になると過激派に引っ張られるのは中国も日本も同じです。だから普通の人は勇気を持つ必要があります。自国民としてやすやす相手の領土として認めるのは無理でしょうが、相手の国民もまったく同じ立場であることに留意したいと思うのです。 私個人としては早く通り過ぎたいと願っているのみです。日中は、無人島のためにこれ以上揉めてもどちらも損するだけです。それでも人気を博したい「愛国者」達が盛り上がりた

残酷な世界で生き延びるたったひとつの方法、橘玲

イメージ
橘玲氏の新著の販売が開始されたが、速攻で金融日記氏がレビューを書いているのでご紹介。 (以下全文引用) 残酷な世界で生き延びるたったひとつの方法、橘玲 : " 残酷な世界で生き延びるたったひとつの方法、橘玲 僕の好きな作家である橘玲さんの新刊がでていたので、今日さっそく買って、さっそく全部読んだ。 結論からいうと大変面白い本だった。 おそらく橘玲の社会論、あるいは人間論の中では最高の出来栄えではないだろうか。 橘玲の現代社会論の集大成のようで、それでいて最近のホットな話題を網羅している。 勝間和代現象を代表とする最近ずっと続いた自己啓発ブームとその底流に流れる社会の変化、リナックスのようなオープン・ソースに関わる優秀なハッカーたちとそのコミュニティーのルール、日本の終身雇用と世界的に高い自殺率、ツイッターのような新しいコミュニケーション・ツール、オウム真理教のようなカルト教団や円天のような詐欺商法・・・ 話題は非常に多岐にわたる。 それでいて全体としての統一感があり、とても読みやすい。 様々な社会現象をもっとも根源的な人間原理、つまり人間という動物の生物学的な性質を通して深く読み解こうとしているので、豊富なトピックを扱いながら首尾一貫した主張―主張というにはあまりにも静かで消極的ものだが―となっているのだろう。 そして最後にこの奇妙な現代社会で生きるためのヒントみたいなものを提案する。 1. 伽藍を捨ててバザールに向かえ。 2. 恐竜の尻尾のなかに頭を探せ。 実は僕も学生の多感な時期に 進化生物学 や 動物行動学 の本を貪るように読んでいたことがあって、大いに影響を受けた。 だからそういう生物学の原理原則で現代社会のいろいろな現象を読み解く本をいつかは書きたいなと思っていたのだが、どうやら橘玲に先を越されてしまったようである。 僕はサラリーマンとして会社で働いており、そうすることによって十分すぎるほどの報酬を得ているのだから、本を書く時間が十分にないことくらいは我慢しなければいけないのだろう。 さて、この本の最初の章は「自己啓発」についてだった。 自己啓発本やセミナーに関しての著者のスタンスは実に明快だ。 「やってもできない」が答えだ。 人はなんらかの努力により自分を変えることができ、より高い能力を身につけて、高い報酬を得ることができるようになるという前提