【レビュー№1786】小説家になって億を稼ごう
小説家になって億を稼ごう
評価★★★
刺激的な題名(これとて、本書で紹介されている「編集」の提案なのだろう)となっているが、平たく言うと「小説家のトリセツ」とでも言うべき内容か。
先にご紹介した「キスカ島撤収作戦にかかる歴史小説」の作者である著者は、既に累計販売1000万部を超える売れっ子作家で、綾瀬はるか主演による映画化、北川景子主演によるドラマ化がなされた作品もあると言う。
書中で何度となく出てくる著者の造語である「想造」という言葉が、本書の最大のテーマなのだろう。徹頭徹尾(何日も!)頭の中で考え抜いて、初めて文字にするという執筆スタイルは、例えば(ジャンルが違うとは言え)野口悠紀雄先生の(ネットやクラウドを駆使した)本の書き方とは対局にあるものであり、興味深く拝見した。
原稿の校正への対処の仕方、編集者との付き合い方、デビュー作が売れたらどうする?売れなかったらどうする?映像化の話が来た時の注意点、税理士と弁護士の活用、果ては万一に備えて著作権を含めた公正証書遺言を書いておこう!などと、ある意味お節介なまでにトリセツが展開される。
勘のいい読者なら、「これ自分のビジネスだったら、こういうところに注意しなきゃいけないんだろうな」と「想造」するだろう。そういう意味であれば、あらゆる人に読む価値のある本なのだろう。もちろん読み物として、十分面白いのだが。