【レビューNo.1575】蘇る翼 F-2B


評価★★★
ヒゲの隊長こと佐藤外務副大臣が少し前に本書の存在をFacebookで投稿していたが、本書は東日本大震災で津波の直撃を受けた航空自衛隊松島基地とそこに所属していたF-2戦闘機隊の再建の物語である。
世界でも類例を見ないという津波で海水(というより汚泥塩水)を被った戦闘機を復元する作業。電子機器の塊である現代の最新鋭戦闘機をかような状況から復元するのは、当初は到底不可能と思われたが、現場の基地隊員、製造メーカー、エンジンメーカー、そして本書ではあまり触れられてないが佐藤副大臣(当時は野党の一議員に過ぎない)の政治家としての奮闘もあって、前例のないプロジェクトがスタート。その道のりは、まさに日本のお家芸である現場力の発揮そのものであることが、詳らかにされている。
タレブの近著の反脆弱性に「現場でのティンカーリング(いじくり回し)が大事なのであって、理論や理屈は大事ではない」という話が出てくるが、まさにそれを彷彿とさせる事例がここにある。

もしも、このプロジェクトが首尾よく完遂されてなかったら、今の緊迫する日本の安全保障上に大きな穴が空いていたであろうと思われるだけに、携わった全ての関係者に素直に敬意を表したいと思う。

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