【レビューNo.1531】現金の呪いーー紙幣をいつ廃止するか?
評価★★★
ロゴフの新著ということで一体どういう内容なのだろうかと期待しつつも、まったく予断及び事前情報無く読み始めたが、要は高額紙幣の発行を止めたらどうか?という提案である。
例えば、日本語版まえがきに書いてあるが日本の通貨流通高のじつに90%以上が一万円札が占めているのだという。これは我々一般国民の生活実体からすると、著しく乖離したものだと思わざるを得ない。犯罪や脱税等の不正蓄財に莫大な現金(とりわけ高額紙幣)が使われており、また、現金の発行残高が膨大であるがゆえに中央銀行によるマイナス金利政策の効果が所期の目的を達することができない、というのが著者の見立てだ。それに対する、著者の提案は時間(例えば5年から7年)をかけてまずは高額紙幣(日本円なら一万円札、米ドルなら100ドル札)の発行を停止せよというものである。氏の試算によればシニョレッジよりは高額紙幣発行停止で得るメリットの方が、はるかに大きいのだという。
個人的な直感としては、なかなかに実現可能性が低い策ではないかと思うが、頭の体操としては面白いのかも知れない。