【レビューNo.1370】霞ヶ関から眺める証券市場の風景 -再び、金融システムを考える
評価★★★★
きんざいを始めとした各種刊行物への積極的な投稿で知られた金融官僚の大森泰人氏だが、どうやら先ごろ退官をされたようだ。
本書の刊行はそれを予期したものではないだろうが、きんざい各種刊行物への投稿をほぼ時系列ですべて網羅して再構成した大著だ。金融庁(旧大蔵省)にこれだけの知見をお持ちの方が他にいらっしゃるのかどうか寡聞にして知り得ないが、全部読み通すのが苦痛になるくらいの驚くべきボリュームだ。
つい最近のいわゆるチャイナショックによる相場急落の際、「私はリーマンショック後に就職したので、このような下げ相場の時にどういう対応をしたらいいのかわからない」との話を若い人から聞いた。もはや、リーマンショックでさえ歴史の彼方へ行きつつある今、かつての本邦バブル崩壊から現代に至るまでの金融業界にあった様々な諸事について、著者ならではの観点から様々な記録が残ったことは、我が国金融史上においても貴重なことではなないだろうか。
ステーキとカツ丼とフカヒレスープを一度に食するような後味を本書には覚えるが、読んでおいて悪い本ではないだろう。幸い近所の図書館に蔵書いただいたので、時折、何かあったらお借りして読むことにしたいw