【レビュー№1257】リスクとの闘い

リスクとの闘い 日銀政策委員会の10年を振り返る
評価★★★★
元日銀審議委員であった著者が、その10年にわたる在任期間を振り返った大著。まえがきからいきなり現日銀執行部への疑念めいた話が始まっており、嫌が上にも期待が高まる。特に現時点の金融政策の理論的支柱であろう浜田御大を一刀両断にしているところには、爽快さすら感じる。
日頃、本石町さんのTwitter等でも感じていたが、本書を読むと日銀の現場は実にきめ細やかな業務を行っていると感心することしきりだ。特にリーマンショックや東日本大震災の際の日銀の対応についての記載は、読んでいて頭が下がる。旧日本軍以来の伝統で、日本の組織は現場が優秀だということが、日銀においても適用されることをまざまざと感じる。大震災の時には、自衛隊も戦っていたが、日銀も戦っていたのだ。
本書を読めば、現日銀執行部は撤退が困難なナローパス(注 著者が使用した表現)を歩んでいることは明白だろう。その行き着く先が、いかなる結果をもたらすかは著者は書いていないが。

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