【池田信夫blog】フリードマンがもし生きていたら・・・


マンキュー(ハーバード大教授、経済学)が自身のブログで、ニューズウイークへのアンナ・シュワルツ(経済学者、1929年の大恐慌を知る92歳で存命)の寄稿を紹介していたが、ありがたいことに池田信夫氏がブログに翻訳披露されているので、ご紹介しておきたい。
(以下引用)
アンナ・シュワルツがNewsweekで、ミルトン・フリードマンが生きていたら今回のFRBの対応をどう論評するかを「チャネリング」している。フリードマンのカジュアルな口調でやってみると・・・
ベンは「フリードマンとシュワルツは正しかった。FRBは1930年代の過ちは繰り返さない」といったそうだけど、彼はわれわれの本をちゃんと読んだのかね。アンナと私が書いたように、FRBの金融引き締めが大恐慌を拡大したのは1933年までで、その後の主な問題は金融じゃない(たぶんFDRが実質賃金を上げたことだ)。今はもう流動性不足じゃないんだから、これ以上通貨供給を増やすのは有害無益だ。大恐慌と今回とはまったく違うんだよ。

天国から見ていると、今回の状況はむしろ70年代のスタグフレーションに似てるね。あのときも原油価格の高騰に対して政府が右往左往し、無原則なバラマキ財政でインフレを拡大し、経済を破綻させてしまった。私が60年代に提唱した「自然失業率」の意味を人々が理解し始めたのは、こうした破局のあとだった。私が言ったのは、単純なことだ:人々はマクロ的な予想にもとづいて行動するので、それが市場で正しく調整されるためには一定のルールが必要だ。政府が場当たり的に介入すると、その予想が混乱して問題はかえって悪化するんだよ。

70年代には財政政策が問題だったが、いま問題なのは銀行監督政策の混乱だ。ベア・スターンズを助けてリーマンをつぶしたのはなぜか、ベンは一度も論理的な説明をしたことがない。「あのときはあわてたので間違えた」というなら、正直にそう認めて、今後はどういうルールで運営するのかを明確にしないと、銀行も企業もどうしていいかわからない。この混乱が続くと、70年代のスタグフレーションのように長期化するリスクもある。

今のようにすべての銀行にジャブジャブ金をつぎんこんでいる状態は、いつまでも続けられない。日本の90年代のように、いずれは整理しなければならない。大事なのは資本注入ではなく、資産査定を厳格にやって助かる銀行とそうでない銀行をはっきりさせ、前者には資本注入する一方、後者はすみやかに破綻処理することだ。そうしないと、助からない銀行はいつまでも実態を隠して追い貸しを続け、危機が長期化する。

要するに、大恐慌と今はまったく違うが、危機管理の本質は同じなんだよ。危機を克服するのは最終的には個人の努力であり、政府やFRBの役割はそれをサポートするためにルールを決めて実行することだ。ベンは自分がどれだけ賢いと思ってるか知らないが、市場より賢くなることはできない。問題は政府の裁量じゃなくてルールなんだよ。これは私が半世紀前からずっと言ってきたことなんだが、彼はまだわかってないみたいだな。
(引用終わり)

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