ピムコCEOエラリアン著「市場の変相」まとめ


ピムコCEOのエラリアンの著書「市場の変相」を読んできた。
相当難解な書であった。以下に自分なりに本書の言わんとすることをまとめておきたい。

1 エラリアンの主張する今後の世界経済のビッグピクチュア
  • アメリカ経済に大きく依存しなくても世界経済は成長を持続できるようになる。新興国経済がますます重要になり、アメリカ経済に代わって世界経済の成長エンジンの役割を果たすようになるからだ。
  • 世界経済の成長エンジンになる新興国は、輸出に過度に依存した外需主導型経済から国内消費を軸にした内需主導型経済へ変化していく
  • 新興国経済が進化する結果、アメリカ経済は「借金による消費」への依存体質を改めるチャンスをようやく手に入れる。遅ればせながらアメリカ経済の体質改善が進めば、世界経済はバランスを取り戻せる。極端な貿易不均衡を是正し、脆弱な国際金融システムを補強できるわけだ。 
  • 天然資源に対する価格上昇圧力が続き、世界のインフレ動向に悪影響を与える。効率的で低コストの労働力が世界経済に登場し、デイスインフレ効果を生み出していたものの、その効果も徐々に消滅していく。すでに異常なほど流動的な環境下に置かれている各国中央銀行は、一段と難しい政策課題を抱え込む
  • SWFの活動がグローバルな資本配分や資産価格の変動にますます大きな影響を与えるようになる。SWFはアメリカ国債など確定利付債への資産配分割合を徐々に引き下げ、インフレ抵抗力があるといわれる株式など高リスク商品へ段階的にシフトしていく。 
  • このような経済上・金融上の変化は一層の構造変化を伴う。構造変化の中心には、デリバテイブの急拡大を背景にした仕組み商品などがあり、その市場は非常に不安定な広がり方を示す
2 エラリアンの言う「新たな行き先」へ向かう道程で注意すべき点や考え方(箇条書き)

  • 当面はデレバレッジと信用創造が大幅に縮小する。国際的な新旧入れ替わりという「新たな行き先」にたどり着くまで非常に険しい旅路が予想される。投資家も当局や国際機関何も行動しないリスクと代償は途方もなく大きい。
  • 新興国の経済を理解することが欠かせない。SWFのような新しい投資家が何を買いそうで、何を売りそうで、その理由は何かまで説明できなくてはならない。ファンダメンタルズをベースにするだけでは、未来の予測を立てるうえでもはや十分とはいえない市場の需給など構造変化にも目を凝らす必要がある。金融のインフラと商品構成が様変わりしている。
  • 新興国は世界経済にとって重要で持続可能な成長エンジン。世界経済がアメリカ経済のパフォーマンスに影響される度合いが低下。このような入れ替わりは、新興国経済が輸出主導型から内需主導型へ転換していく構造変化と同時に起きる。 この過程で、新興国が一段と相互依存を高め、特にアジアでその傾向が強くなる株式や不動産などの市場はSWFの資産配分計画の変更によって恩恵を受けそうだ。

3 エラリアンの推奨する「新たな行き先」に対応する投資への考え方

  • 新たな行き先を定める。正しい手段を用いる。途中での変更が不可能であることを前提に分析を始めるのが重要。しかし、毎年一回のペースで定期点検を実施すべき。
  • 「新たな行き先」が実現するならば、投資家は株式投資の世界的分散化を進めようとする。中国など新興国の通貨は強い通貨としてユーロに取って代わる存在になるだろう。
  • インデックスファンドは過去志向であるので注意が必要だ。しかし、パッシブ運用を減らすまでしてアクテイブ運用のファンドマネージャーの採用に動いてはならない 。
  • 実物資産は、高インフレ期に資産価値を保全する戦略にかなう。
  • 投資家にとって行き先では適切なことであっても、旅の道中では必ずしも適切でないこともある。債券はリスク軽減戦略を支える自動装置や構造を提供する。債券保有によってポートフォリオ全体のリスク調整後の期待リターンを引き上げられるかと自問すべきなのだ。
  • リスク管理で成功したければ、最終的に達成すべき目標はただ一つ。データ分布上の左端で尾のように伸びている「レフトテール(左側の尾)」を最小化することである。 過去数年間で黄金時代を迎えたのは、積極的に流動資産へ投資し、借り入れを増やした人たちだ。次の数年間で黄金時代を迎えるのは、細心の注意を払ってリスク管理する人たちだ。
  • 両極端しかないという「コーナー解」の展開が鮮明になり、先行き不安が高まるなかで、投資家はポートフォリオを構築しなければならない。こんな状況下でテール保険を利用すると柔軟性を手に入れて、資産配分上の重要な意思決定に際して「コーナー解」に縛られずに済む
  • 有能なファンドマネージャーは「重要だが緊急でないこと」を決して見失わない。 「険しい旅路を踏破しなければ行き先にたどり着けない」という事実を認識し、行動すべきだということだ。
以上

(ご参考)

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