【新型インフル関連】厚生労働省「基本的対処方針」の実施について

新型インフルが日本国内でも人→人感染のフェーズとなった。
厚生労働省から「「基本的対処方針」の実施について」というペーパーが出ているので、ご紹介しておく。

(以下引用)

「基本的対処方針」の実施について

平成21年5月16日

新型インフルエンザ対策本部専門家諮問委員会

1.はじめに

本日、新型インフルエンザ(A/H1N1)患者が国内で発生したが、渡航歴もなく、これまでの患者や停留者との接触もないため、地域での感染が始まった可能性が高い。しかも、今回は軽微な症状を呈する感染者が多いので国内での感染拡大のおそれがある。これは、新型インフルエンザウイルスが国内に侵入し、国内における感染の状況が、第2段階(国内発生早期)となったということである。

今回の新型インフルエンザの感染力は、季節性インフルエンザと同様に感染性は強いが、諸外国においては、多くの患者が軽症のまま回復しており、我が国のこれまでに確認された4名についても同様であった。

治療については、抗インフルエンザウイルス薬の効果があると報告されている。

しかし、基礎疾患(糖尿病等)のある人たちを中心に重症化する傾向があり、死亡例も報告されている。

以上のことから、

(1) 感染の更なる拡大を防ぐこと。

(2) 特に、基礎疾患のある者など重症化しやすい人が新型インフルエンザに感染して死亡することを防ぐことに努力を集中すべきである。

このため、国、地方自治体、保健医療関係者、国民全員が協力し、

(1) 国内発生早期においては、感染の疑いのある例についてはすべて検査し、感染が強く疑われる場合には、軽症・重症を問わず措置入院し、更なる感染の拡大を防ぐ。

(2) 感染の拡大が進んだ段階においては、多くの軽微な感染者が発生し、医療機関に殺到する可能性がある。したがって、医療機関においては基礎疾患のある人が重症化しないよう医療供給体制の充実と各医療機関の機能の明確化を図ることが重要である。また、軽症の患者については、自宅での療養、医療従事者の訪問、あるいは、発熱外来への受診の徹底により一般の患者と接触しないような工夫など、地域の実情に応じた対応を行う。

専門家諮問委員会としては、現在、知られている新型インフルエンザウイルスの性状等を踏まえ、基本的対処方針の実施に関しては、以下の点について、柔軟で弾力的な運用を行うよう提言する。

2.社会生活上の取組みについて

以下の各項目については十分に留意し、適切な対応をとるよう、政府は関係者・国民に周知徹底するべきである。

○ マスクの着用等

→ 個人における感染防止策の徹底は極めて重要であり、引き続き手洗い、人混みでのマスク着用、咳エチケットの徹底、うがい等を行う。

※屋外等の解放空間においては、相当な人混みでない限りマスクを着用する意味はない。電車やバスの中等の換気が悪く閉鎖的な空間の中ではマスクを着用することで周囲の人の咳やくしゃみによる飛沫を防ぐ意味がある。また、他の人への咳エチケットとしてマスクを着用することが望ましい。

○ 外出

→ 現時点では一律に外出を控えなくてもよい。個人は、人混みはなるべく避けることなどに引き続き注意する。

○ 通勤・通学

→ 現時点では一律の時差通勤等をしなくてよい。個人は、通学も含め、なるべくラッシュ時を避けるなど、感染機会を減らす努力を行う。また、事業者・学校は、時差通勤・通学を容認するなど、通勤・通学に際して従業員・生徒の感染機会が減るように工夫する。

○ 集会、スポーツ大会等

→ 現時点では一律の自粛は要請しない。主催者は、当該イベントの趣旨・必要性等を勘案し、総合的に判断すること。

○ 学校・保育施設等

→ 患者が学校・保育施設等に通う生徒・児童等の場合、その地域(市町村の一部又は全域、場合によっては都道府県全域)の学校等については臨時休業することを原則とする。ただし、大学については、一律の休業を要請せず、各大学において感染が拡大しないように努める。

一方、患者が学校・保育施設等に通う生徒・児童等でない場合、2次感染患者が発生し、さらに感染拡大のおそれがある場合には、同様に臨時休業を行う。

また、臨時休業の終了時期については、新型インフルエンザの発生状況に応じ、1週間ごとに検討を行う。

保育施設の休業に際しては、保育所に子供を通わせている従業員の勤務について、事業所は配慮する。

○ 事業者

→ 現時点では一律の事業の縮小については要請しない。事業者は、事業を適切に継続できるようにするとともに、感染ができる限り拡大しない事業運営を行うこととすべきである。

3.国内発生が見られた後の医療について

<医療機関への受診>

○第2段階(国内発生早期)からは、この時期最大の目標として軽症・重症を問わず、すべて検査を行い感染が強く疑われた例はすべて措置入院とし感染拡大しないようにする。同様に重症例の治療に全力を注ぐことが必要である。そのために、発熱や咳などのインフルエンザ様症状が見られた場合には、まず「発熱相談センター」に相談のうえ、「発熱外来」を受診する。

○政府としては国民にこの趣旨を周知徹底し、「発熱相談センター」や「発熱外来」の利用について理解と協力を求める努力をすべきであり、国民も「感染により重症化しやすい人の命を守る」という政府の方針に積極的に協力すべきである。

○第3段階(まん延期)では、多くの軽症例が発生するために、病院における治療は重症例のみに集中すべきである。更にこの時期では新型インフルエンザの患者を指定医療機関だけで治療することは、収容能力の上からも、また、感染防止対策としてもその意義は薄く、一般の医療機関も含め全ての医療機関で新型インフルエンザの治療に対応する。ただし、こうした医療機関では新型インフルエンザとして収容されている患者と他の患者との接触を断つことに十分留意すべきである。

○ 多くの軽症患者が一般の医療機関に殺到すれば、基礎疾患があり重症化しやすい人に感染の危険が及ぶことになる。このため、軽症の患者へは、出来るだけ医療機関への受診を控えて、地域の実情にあった方法、例えば自宅で療養するなど協力を求める。その際、自宅待機する患者に対しては、治療薬の宅配、医療関係者の訪問など、地域毎に患者の視点に立った対応が準備されているところもあり、他の自治体もそのような事例を参考にして、患者が協力しやすい医療体制を整備すべきである。また、病院と診療所はそれぞれの役割、及び責任分担を行い、軽症者と重症者の治療に混乱のないよう連携を図るべきである。

<抗インフルエンザウイルス薬>

○第2段階(国内発生早期)では、感染者に対して治療の目的でタミフル等の抗インフルエンザウイルス薬を投与するが、更に、濃厚接触者やウイルスに暴露した疑いのある医療従事者、初動対応者等に対し、抗インフルエンザウイルス薬の予防投与が行われる。

○もっとも感染の危険性があるのは患者の同居者であるが、そのほかにも疫学調査で感染の危険性が高いと指摘された者(同じ学校、同じ職場の濃厚接触者など)については患者の行動範囲を考慮して予防投与が行われる。

○ 第3段階(感染拡大期)では、抗インフルエンザウイルス薬を治療として使用する事に優先した方が良いため、予防投与は基本的に行わない。ただし、例外として、家族等に感染により重症化しやすい人が含まれる場合等には予防投与があり得る。

○いずれにせよ、感染拡大期以降では、治療に必要な抗インフルエンザウイルス薬が十分確保されることが重要である。予防投与は感染により重症化しやすい人などに例外的に行われるべきであり、この点について国民の理解を深めていくことが必要である。

4.おわりに

新型インフルエンザ対策は、国・自治体・医療関係者・国民が一体となって協力することによりはじめて成果が上げられる。限られた医療資源を効果的に運用するためにも、上記の医療体制について国民の十分理解な理解が得られるよう、国・自治体・医療関係者はあらゆる努力をすべきである。


(引用終わり)

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