【レビュー№1832】データエコノミー入門
データエコノミー入門
評価★★★★
2020年刊行の文庫版「ブロックチェーン革命」のアップデートとも言える内容だが、今回は思い切り金融分野に内容がシフト。まえがきで「金融機関にお勤めの方は読むべきだ」と脅しの様なことを書いておられた(まえがきはネットで公開されていたので、読む前から知っていた)ので、Amazonをポチった次第。
先生も早いもので80歳を超えられたというのに、この分野の現状や変化をフォローし続ける執念や凄まじい。余談だが、かつてポリーニがショパンコンクールで優勝した際に、審査委員長のルービンシュタインは「今ここにいる審査員の中で、彼より巧く弾けるものが果たしているであろうか」と賛辞を述べたそうだが、それを真似れば「今ここにいる金融機関職員の中で、先生より的確に(ビッグ)データとしてのマネー(の価値)を理解しているものが果たしているであろうか」ということになるのだろう。
(ビッグデータの分野で)先生の基本シナリオはGAFAMの一人勝ち(5人勝ち?)継続なのだが、なんと先生の試算によれば、Googleや Facebookは市場で正しく評価されてない(株価が安い)のだと言う。
しかし、国際的な個人情報保護の流れ(Cookieの拒否など)から、従来通りのビッグデータの収集が困難になる中、ビッグデータとしてのマネーが狙われているというのがことの真相の様だ。Facebookのdiemやデジタル人民元などはその意図はすべてそれで説明がつく様である。
その中で、終わり3章くらいは日本のマネーと金融機関の現状と問題点が検証され、ラストは先生のポエムの様な未来のおとぎ話で終わっている。これをポエムに終わらせずに、現実にすることが我々に課せられた課題なのだろう。