【レビュー№1811】わが米本土爆撃

 

わが米本土爆撃

評価★★★

Wikipediaなどの情報で、太平洋戦争中に密かに米本土に接近した潜水艦から発進した水上機で、日本軍が米本土の空襲に成功したとの話は前から知っていた。ただ、タレブが言うように、歴史は勝者が作るので敗者の歴史は埋もれがちだ。実際この逸話も実行前後において海軍内では秘匿され、誰も知ることは無かったという。本書によれば、この作戦はドーリットル隊のB25爆撃機日本急襲のリベンジとして企図され、しかも人口集中地を爆撃するのではなく、大規模な山火事を起こすことで米国民の戦意を削ぐことを意図して立案されたのだと言う。しかも、当時士官軍人であられた高松宮様臨席の作戦会議で検討されたと言う。

人の殺傷を意図しないというのは、いかにも日本人らしい奥ゆかしさか。

驚くべきは勝者米国の大らかさである。戦後も随分たった昭和37年。著者の元に大平正芳官房長官(当時)から突如面談したいとの連絡が入る。米国側が著者の身元紹介をして来たというのだ。それからほどなく、外務省経由で著者のもとに届いた米国からの封書には爆撃をしたオレゴン州ブルッキング市長の名で「アメリカは開国以来、外敵の侵入を許したことがなかった。日米戦争において貴殿はこの史上の記録を破って、単機でよく、米軍の厳重なレーダー網をかい潜り、アメリカ本土に侵入し、爆弾を投下した。貴殿のこの勇気ある行動は敵ながら実に天晴れである。その英雄的な功績を讃え、さらなる日米の友好親善を図りたい」とあり、著者とその家族を同地に招待したいと書かれていたのだ。実際著者はその後複数回同地を訪問し、逆に私費などで同地の若者を日本で招くなどして親善に貢献している。ブルッキング市では現在でもその爆撃の日が「フジタノブオデー」という記念日となっており、米国内で本年これについてのドキュメンタリー映画が公開されている様である。

本書は前半が戦時中の軍務のこと、後半が日米親善に至る話となるが、最終的に著者は(戦時中に米西部で軍務に就いておりあるいはこの話を知っていたかも知れない)レーガン大統領から感謝状と米国国旗(実際にホワイトハウスに掲揚されていたもの)を贈られるまでに至るのだ。

間違っても米国を敵に回してはいけない(中国の味方となってはいけない)、これが本書から得る教訓だろう。

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