【レビューNo.1681】日本人だけがなぜ自衛隊の実力に気づかないのか?
評価★★★★
小学生まで日本に暮らした後、米陸軍の奨学金で大学卒業後軍務につき、一貫して米陸軍の日本語専門家として日米の現場レベル架け橋として尽力してきた著者による、日本国防分析の書。
著者は東日本大震災の際に横田基地に勤務していたことから、事実上トモダチ作戦の連絡将校の役割を担っていた様で、有名な仙台空港復旧作戦(特殊作戦機コンバットタロンの仙台空港強行着陸に始まる、おそらく米軍が唯一前面に出たトモダチ作戦)も彼のアイデアだった様だ(発案後4時間で作戦開始)。
現場レベルはきわめて鍛錬ができていて、装備も常に整備されている自衛隊を著者は高く評価する一方、東日本大震災などでも見られた決断の遅さを日本の欠点と指摘するのは、軍事だけにとどまらず広く日本人にとって耳の痛い話だろう。
後半は、北朝鮮問題が中心となっているが、著者の掴んでいた情報によれば、やはり本年初めにかけて、少なくとも複数回開戦寸前の状況にあった様だ。ただ、著者は米朝開戦が第三次世界大戦(具体的には虚をついてのロシアのウクライナ侵攻、中国の台湾侵攻)の引き金となりかねないと否定的である。
現時点では日本における現実的な脅威としてはミサイルだけだと客観的には分析される様であり、イージスショアをはじめとしたミサイル防衛強化は理にかなっていると著者は言う。つまり、米国に届く核は無い(ICBMは排除される)が、日韓に届く核は残るのが現実的な道筋の様だ。わかっていたとは言え、そういう時代をこれから我々は生きていかなければならないということは肝に命じておくべきだろう。