【レビューNo.1682】Strauss: Don Juan / Petrenko · Berliner Philharmoniker
評価★★★★
いよいよペトレンコとベルリンフィルとの新しい時代が始まった。
デビューコンサートの曲目を知って、腰が抜けるほど驚いた。カラヤン・ベルリンフィル黄金期の鉄板レパートリーが用意されたからである。しかも、コンサートマスターは我らが樫本大進が起用されいやが上にも期待が高まる。
冒頭はカラヤンが最も得意とし数多くの録音を残したリヒャルト・シュトラウスのドンファン。気のせいか、団員たちの顔もラトルの時代と違って生き生きと感じられ、特にコンサートマスターの樫本大進は侍かの様な鬼神の表情でオケを引っ張っているのが嬉しい。複数回あるバイオリンソロの部分も完璧な演奏で期待に応えてくれた。ペトレンコらしさを感じるのは、曲の最終盤か。ゆったりとしたテンポを取る中に、あたかもオペラのワンシーンを思わせる雰囲気があり、さすがはバイロイトでワーグナー振る指揮者と感心した。
続く、同じくリヒャルト・シュトラウスの死と変容、ベートーベンの交響曲第7番と、非の打ち所がない演奏で、何故無名な彼がベルリンフィルに選ばれたのか疑問に思っていた我が身を恥じなければならないと告白しておこう。
終演後、奏者が全員引き上げても拍手は鳴り止まず、ひとりペトレンコが再び壇上に立ち上がるまで、聴衆が帰ることはなかった。