【レビューNo.1494】鉄道が変えた社寺参詣


評価★★★
作家の板谷敏彦氏が紹介されていたので手に取ってみた。よく、初詣は鉄道会社の営業戦略の賜物であり、その様な伝統はそもそもないという都市伝説めいた話が【鉄分】多目の人たちの間などで交わされているが、本書は東大大学院の学術研究員が歴史家として大真面目にそういったテーマのことを資料に基づき検証しており、ただの鉄道マニアが道楽で書いた様な本とはいささか趣が違う。さすがは氏が紹介する本だけのことはある。

個人的には川崎大師のあたりの話が興味深い。現在の京急大師線こそが、この様な社寺参詣と鉄道の専用線敷設という点ではまさに端緒に当たるものであり、なおかつ同線はなんと東京(首都圏)史上初の電気鉄道だったのだ。無論、京急自体も大師線が発祥の源流でありついには東京と三浦半島を結ぶ大私鉄にまで至ったと思うと感慨深い。電車に乗ることが非日常だったのんびりとした昔話の時代だが、その中であっても官鉄(後の国鉄)と民鉄との激しい価格やサービス競争が起きているのは面白い。そう言えば川崎大師も京急大師線も一度も行ったことが無かったが、本書を読むと訪問してみたくなってきた。遅まきながら、初詣に行くかw

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