【レビュー№1212】世界史の中の資本主義

世界史の中の資本主義: エネルギー、食料、国家はどうなるか
評価★★★★★
独自の経済史観で社会経済を捉えるエコノミスト水野和夫氏、食糧危機は存在しないと一刀両断する川島博之氏に加え、石油問題のスペシャリストとして角和昌浩氏、グローバルヒストリーの専門家の山下範久氏が各1章ずつを担当して、それぞれの専門分野から資本主義を語った異色の書。
水野和夫氏と言えば、その著書は異様なまでに大部なことが多く、無精者の評者はなかなか手が伸びないことが多いのだが、本書では担当が1章と限定されていることもあり、かえって氏の主張がコンパクトにまとまっており、素人である評者の理解には結果的には手助けとなっている。
角和、川島両氏のエネルギー及び食糧問題に関する章も非常に興味深い。川島氏は過去から食糧危機は存在しないとの持論であるが、本書でもその主旨はいささかの変化も無い。
実は本書を読もうと思ったのは、直近に読んだ糖質制限食の本で著者が食糧危機説に帰依していたようなので、川島氏の説をもう一度確認したくなったからだったのだが、読み終えてみて安心した。
一方、安心できないのは本書の題名にもなっている「世界史の中の資本主義」なのだろう。そのあたりについては、池田信夫氏の本書レビュー記事にコンパクトにまとまっているので、一読されることをオススメする。
いずれにしても、シェールオイルを中心としたエネルギー問題、食糧問題、経済史の観点から見た資本主義の問題点について、さほど厚くも無いこの一冊で考察できることを考えれば、大変お薦めの書であると言えるだろう。

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