ライアンエアーはなぜ機内のトイレを有料にしようとするのか?
<業務連絡>
来週、花嫁キャンプがいよいよ横浜と東京で。少人数でゆっくり話を聞いて下さい。
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日経ビジネス11月22日号はアップルの特集になっていますが、面白いと思った記事はその後に載っていた、格安航空ライアンエアーの話でした。
以前、ニュースで立ち乗りの飛行機やトイレを有料にする飛行機といった奇抜なアイディアを出したことで知名度を上げていた、LCC(ローコストキャリア)の代表企業ですが、今やルフトハンザを抜いて欧州では最大の航空会社になっています。
ライアンエアーの究極の目標は運賃ゼロという過激なものですが、決して無理ではないようにも思えます。運賃はゼロでも、他のサービスで利益が上がれば問題ないからです。
例えば、搭乗券の印刷(自分でやればタダ)、手荷物チェックイン、重量オーバー課金、機内販売、といった収益で従業員コストを賄えるようになれば、その分運賃が下がることになります。あるいは、早期の予約は運賃ゼロにして、直前になったら運賃を上げることもできるかもしれません。
ライアンエアーが強いのは極めて効率的な仕組みを、人間の行動心理をうまく使って実現しているからではないかと思いました。
例えば、乗務員の給料の39%は機内販売の売り上げや労働時間に応じて決まっているようです。だからせっせと機内販売に勤しむのです。
また、ライアンエアーには座席指定がなく、リクライニング機能もなく、前の座席のポケットも無いそうです。食べ物や飲み物も有料で提供されます。
座席指定が無いと良い席を確保しようと早く並ぶので、フライトの遅れが無くなります。リクライニング機能やポケットが無いと清掃や機内整備の時間が短縮できます。有料サービスなら必要な人だけにサービスするので負荷が軽減します。
ライアンエアーがトイレを有料にするというのも、話題づくりではなく真剣に検討していることのようです。トイレを有料にすれば、フライトの前にトイレに行っておくという人が増え、トイレの数を減らすことができる。そうすればその分座席を増やしてコストが下がるのです。
提供するサービスをできるだけ細切れにして、必要な人にだけ提供してそのコストを利用する人に負担してもらう。すると、いらないと思っている人に提供する必要が無くなり、無駄を削ることができる。
既存の航空会社のようにどんぶり勘定で運賃を設定するモデルでは、ライアンエアーとの価格競争には絶対勝てません。
長距離ならともかく、1時間程度のフライトだったら、サービスは何もいらないし、座席もそこそこで良いからとにかく安くしてほしいという利用者は多いと思います。
世界では、航空業界もコモディティ化が想像以上のスピードで始まっている。日本にこの波が本格的に押し寄せてくるのはいつになるのでしょうか?
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