日中の間、国の間

宋文洲さんのブログからご紹介
(以下全文引用)

日中の間、国の間: "先週から東京に居ます。友人知人に会うと必ず領土問題について聞かれます。昨日、日経BP主催の経営者向けセミナーで講演しましたが、予定のテーマの前に「ぜひ触れて欲しい」と言われたのもこの問題です。

ロシア、インド、ベトナム・・・あの北朝鮮さえも中国と領土問題を抱えています。私にしてみれば領土問題はいわゆるお隣さんの証拠でもあるのです。この種の揉め事はよくありますが、ここまで拗れたのは確かに珍しいです。

実は、私は靖国神社の問題の時を思いました。あの頃、私はまだ北京に移住していないので生活のベースは東京でした。多い時には一日3、4回も講演に呼ばれていましたが、質問時間になるといつも「靖国についてどう思うか」と聞かれました。

はっきり言って疲れます。日中の間で生きてきた私ですが、何も思わない訳がありません。思うのですが、はっきり言ってその思いが揺れるうえ、自信もないのです。ちょっとでも気をつけないとすぐ「中国の肩を持つ」とか、やっぱり「中国人的発想だ」とかと言われるのです。

私は中国の政治家と過激派だけの話を信じないのですが、だからといって日本の政治家と過激派を信じる必要もどこにもないのです。自分の独自の方法で事実を調べたいのですが、不可能です。だから本音はどうでもいいと思ってしまうのです。

この原稿を書いている時にテレビに前原大臣が昔の人民日報を出して「日本の領土だと認めた」と言いましたが、先々週の中国のテレビでは著名学者が昔の日本地図を出して「中国の領土と書いた」と言いました。どちらを信じるかは問題ではなく、どちらの国民も一部の情報にしか触れず、相手の主張の詳細を知らないのです(興味がない)。企業間のトラブルも同じです。まずい結果が出ると全部部下や相手のせいにしてしまいたいのは無能無責任の管理職です。

領土問題になると過激派に引っ張られるのは中国も日本も同じです。だから普通の人は勇気を持つ必要があります。自国民としてやすやす相手の領土として認めるのは無理でしょうが、相手の国民もまったく同じ立場であることに留意したいと思うのです。

私個人としては早く通り過ぎたいと願っているのみです。日中は、無人島のためにこれ以上揉めてもどちらも損するだけです。それでも人気を博したい「愛国者」達が盛り上がりたいならば、彼らだけが集まってどこかの星にいって戦争でもしてくれればいいと思います。我々を巻き込まないでほしいものです。

しかし、国と国の間に生きることはこういうことに慣れることです。いちいち過剰に反応していたらやっていられません。皆さんはこれこそチャイナリスクと仰いますが、リスクのない国はありません。

武富士の創業者の武井さんに会ったのはつい最近のことのように思えます。小雨の中に到着すると守衛さんにタオルを渡されました。感動しました。彼の躾でしょう。立場も違う、年も違う、国も違うのですが、彼ととっても通じ合いました。帰りに強壮剤を渡されました。「まだ必要ではありませんが」というと「実は私も使っていない」とにっこり。

素晴らしい会社があっという間に潰れましたのはなぜでしょうか。

日本にもリスクがあるのです。規制のリスク、不況のリスク、「空気」のリスク・・・我々がグローバルに生きると決めた以上、まず個人として強くなることです。一ヶ所ではなく複数個所に市場、資金そして仕入れを分散させ、その変化に機敏に対応するしか方法がないのです。

日中の間に生きてきた私ですが、日中の全てを受け入れることにしています。悪いことも良いことも、嫌なところも好きなところも。国と国の間に行ったり来たりすることはとても広い心を持たないと自分がどんどん辛くなるので損です。

日本の若者が外国に行きたくないとよく聞きますが、本当かどうかはわかりません。ソフトブレーン中国では若い日本人社員が元気よく働いているので実感がありません。彼らは皆自分の意志で来ていますし、楽しんでいます。

しかし、もし統計的に本当に若者が外国に行きたくないならば、それは日本社会に何か問題があるというしかありません。一つの国だけでやっていける時代は、もう、ないでしょう。国としても、個人としても。
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