日本の競争力は「日本らしさ+アルファ」
宋文洲さんのブログがひさびさに更新されてたので、ご紹介しておこう。
(以下全文引用)
なんと新卒から入社してもう15年目というのです。彼は30人の組み立てラインの時代から8000人になった今までの歴史を語り、各製造工程の現在の細部の取り込みも紹介してくれました。
彼は口癖のようにオリンパスのことを「我々」と言うし、しきりに日系を含む他社との違いを強調していました。その表情は誇りに満ちていました。工場の排水処理について聞かれた時、彼は特に熱が入りました。「すべての排水はきちんと再生され一部トイレなどに使いますが、余った水は敷地内の池に溜めます。宋さん、安全を示すために僕らはあの池に魚を放しましたが、今は皆大きくなりいっぱい繁殖しましたよ」。
労務管理について聞かれた際、彼は20代の工員達を指して言いました。「彼女達は10年前の工員と全然違う。我慢しなくなり、金銭だけのために仕事をしなくなりました」。「どう対応するのですか」との問いに彼は「現場からの提案を奨励し、横のコミュニケーションを強化する」と答えました。
これ以上細かいことは書きませんが、全部日系企業の良さでした。現場に日本人社員を一人も見かけませんでしたが、日本企業の良さが自然な形で社員と組織に浸透していると感じました。「見える化」の一環として壁にはいろいろな指標のグラフや表が書かれてありますが、説明文の中国語にカタカナが混ざっています。
「どうしてそうなっているか」と聞くと「そうすれば日本人も中国人も無理なく読めるから」というのです。どうも中国人社員はカタカナを新しい漢字として認識しているようです。
「御社の日本人についてどう思いますか」と聞きましたが、ダイちゃんは「うちの会社が任せてくれるからやり易い。工員の不満も責任をもって解消できる。だから労働騒動もない。うちの鈴木をみれば分かるでしょう。オープンだよね」。
ダイちゃんがいう「うちの鈴木」とはオリンパス中国の総責任者の鈴木専務のことです。実はこの日、私は鈴木専務の要請でシンセンの工場にきました。彼は応接間で私の見学終了を待っていました。鈴木専務がダイちゃんを見る視線はまさに日本企業によく見られる上司が部下を見守る温かい視線でした。
オリンパスの内視鏡は中国市場の7割を占めていると言われています。私はもともとその内視鏡の責任者である彦坂さんに頼まれて営業の見える化、サービスやマーケティングとの連携の仕組みを提案していました。
トップは日本人ですが、そのトップの彦坂さんは中国人社員からあたかも中国人のように接されています。14年以上の滞在経験と24年にわたる中国ビジネス経験を通じて言葉の問題はもちろんありませんが、何よりも中国人幹部との感覚の融合です。その感覚を持っているからこそ、中国の各種医学会、著名大学、地方政府の中にも入り、その存在感をいっそう大きくしています。
先日、彦坂さんが私に嬉しそうに「うちの社員はジョンソン・アンド・ジョンソンにスカウトされたよ」と言いました。ようは「自分達が育成した社員はあのジョンソン・アンド・ジョンソンも欲しくなる」ということです。そこには「裏切り者」との思いが一つもないのです。
日本企業の強さは決して欧米のやり方を真似することではありません。グローバル展開は決して東京本社に英語を導入することではありません。日本らしさにオープン精神を加えてこそ日本企業の競争力です。
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