「先入観」
先入観と恐いものである。私がつくばエクスプレスで通勤していた際、東京スカイツリーは浅草近辺であり、浅草が地下駅であったため見えないと思い込んでいた。しかし、すでに東京タワーの高さも上回っており、当然そのようなことはなかった。そのことに気がつくまでは何故か、車窓から見えている塔が視線に入っていなかったのである。
ところが、最近になって、たまたま昼にシート席の正面を向く席で車窓の風景を見ていたところ、それが見えたのである。つくば方面から南流山の駅を出て地上に出た際、すらっと伸びた塔が遠くに見えた。最初は何なのかわからなかった。しかし、その方向を見てスカイツリーであるとわかった。
これまで通勤中はあまり車窓を楽しむ余裕なく、冬場はまだ外が暗かったこともあるが、新聞を読んだ後は寝てしまったりしていたことで、それが目に入らなかった。そもそも見えるという概念が欠如してしまっていたのが大きい。しかし、それが見えた時は、いまさらながら感動ものであった。スカイツリーがTXから最も良く見えるのは、つくば方面からは北千住を過ぎて地下トンネルに入るあたりまでである。確かに浅草とは距離的にはそんなに遠くないので見えて当然ではあった。
しかし、それに気づくのにこれほど時間がかかるとは。先入観というものは本当に恐いものである。まもなく選挙戦が始まるが、民主党も菅新政権となり財政再建に向けた姿勢を強めた。鳩山政権の際には選挙に向けては増税論議は封印し、ある程度パラマキで対応しなければならないという先入観により、国民が本当に求めているものを見誤っていたのではないかとも思われる。
菅首相も鳩山政権での財務相に就任の頃には、財政再建に向けてはどちらかと言えば消極的であった。しかし、財務相となり現場の声を聞くことにより財政への危機意識を強め、海外でもギリシャ問題などを受けての財政に対しての議論を戦わせるうちに、次第に財政再建の必要性を認識していったと思われる。これもある程度の先入観が取り除かれたとも言えるのかもしれない。
それでは先入観を取り除くにはどうしたら良いのか。これにはいろいろな人の意見を聞くことも大事かもしれない。また、視線を広げることも重要か。思い込みは大事なことを見逃してしまうリスクがある。なるべく先入観は持たないように望みたいが、これもなかなか難しいものでもある。