音楽産業とマスメディアの次にインターネットが破壊するのは金融業界だ–ついに

昨日ツイッター上で話題になっていた記事、ちと長いですがご紹介。
(以下引用)

音楽産業とマスメディアの次にインターネットが破壊するのは金融業界だ–ついに: "

TrainRobbery

インターネットのいちばんすごいところは、いろんな業界を破壊したことだ。ファイル共有(Napsterなど)とiTunesは音楽産業の姿を完全に変えてしまった。ブログなどオンラインのコンテンツは古いメディアを殺した。そしてオープンソースとsoftware-as-a-service(SaaS)は、高価な、社内据え付け型の、企業用ソフトウェア製品をたたきのめした。

それによって、多くの企業が苦しみ、善良な人びとが職を失った。メディアの世界では、私の友人たちにも犠牲者は多い。しかし多くの場合インターネットは、義賊ロビンフッドのように振る舞い、中間管理職たちのさや取りによって肥大した価格を下げ、価値ある情報やサービスを低料金または無料でエンドユーザに届け、またビジネスへの新規参入障壁をぶち破った。

しかしインターネットには、第二の驚きがある。今でもまだ、インターネットにとってアンタッチャブルな業界があるのだ。その一つが金融(finance)だ。初期にはeTrade、Ameritrade、Scottradeなどがあったが、不透明と混乱と政府の規制を基本資質とする古典的な金融業界は、今も昔のままだ。昨年の金融メルトダウンを見るかぎり、この現状は絶対によろしくない。

でも幸いなことに、変化はいくつかの意外な方角から起こっている。「ファイナンス 2.0」の最初の出走馬は、誰もが知っているMint.comだ。Intuitに買われたMintは、ウォールストリートを信用していないシリコンバレーで自らのカテゴリー(金融分野)の実効性を実証した。しかしMintは、金融革命と呼ぶにはあまりにもささやかなサービスだ。UIはいいし、新しい機能もあるが、オンラインで自分の金を管理するためには銀行のサイトやQuicken、MicrosoftのMoneyなどを使う人のほうが相変わらず多い。

むしろMintの役割は、金融もWebビジネスのカテゴリーでありうるぞ、と起業家たちに気づかせた点にある。そして最近の新しい…はるかに野心的な…オンライン金融企業の一群は、既存の太りすぎの金融業界から儲けをかすめ取り、彼らを困惑させ、彼らの地位を脅(おびや)かしつつある。

本誌はこの連中についてすでに書いてきたが、ついそこまで来ている革命の、大きさを知るためには、彼らを「群」として見るのがよいだろう。彼らは金融業界のいろんな部分を攻撃しているが、共通点が一つある: 最近やっと、金融のプロたちと一般ユーザの両方が彼らに対し真剣な関心を持ち始めたことだ。以下のリストは網羅的なものではないが、私がすばらしいと感じたサービスを挙げてみたい:

-Wongaサラ金を変えようとしている。貸し手から取る手数料は高いが、利用者には早期返済を奨励する。そのため、緊急時貸し付けの利息と手数料は比較的低く抑えられる。Wongaの収益は、実際に返済が行われたときにのみ発生する。従来のクレジットカードやサラ金は(利息先取りにより)、利用者の負債期間が長ければ長いほど、その金額が大きければ大きいほど、儲かる仕組みだった。

-kaChingミューチャルファンドを変えようとしている。平均3%だった手数料を1.5%に下げ、投資ファンドマネージャたちがやってることに透明性を持たせ、彼らの過去の実績だけでなく、今何をやっているかも公開する。それまでは、ファンドマネージャは今管理している資産の総額で報酬が決まり、パフォーマンスは無関係だった。この旧弊により、ファンドのパフォーマンスは劣化し、投資対象の切り換えも機敏に行われなかった。kaChingは、今どんな投資が行われているかを投資家に対し透明にすることによって、投資家がより多くの専門家ファンドマネージャと接しられるようにし、従来の旧弊を逆転しようとしている。

-SquareBling Nationは、支払いの仕方を変えて、それをより便利にし、ATMやカード(Visa, Mastercard, …)の利用で取られる手数料をなるべくなくそうとする。彼らの方式は、トランザクションの関与者全員(エンドユーザ、小売り業者、銀行)にとって有利である。Bling NationのファウンダでCEOのWences Casaresは、“VisaやMastercardのやり方を激しく憎んでいる人がこんなにいるとは知らなかった”と言っている。

-“えっ?そんなのあり?”の筆頭がBlippyだ。このソーシャルな支払いサイトは、従来は不透明だった価格政策をオープンにし、ユーザが価額をほかの多くの人と比較できるようにする(あのホテルで友だちがいくら払ったかが分かる)。Blippyの未来はかなりTBD(to be determined, 未定)だ。人びとが過去10年で友人や位置情報を平気で共有するようになったのと同じく、今後、お金の情報も平気で共有するようになるか?…Blippyの未来は、この一点にかかっている。答えはノーかもしれないが、しかし料金や価格に透明性が実現すれば、消費者にとってはお得な事態が訪れるはずだから、そこを考えればもしかして…。

彼らが成功したら、音楽産業がアルバムではなく曲を売らざるをえなくなったのと同じようなラジカルな変化が金融業界に訪れる。音楽業界が盛んに抵抗したけど、無駄だったことを思いだそう。金融機関の利用も、罠や落とし穴なし、おかしな手数料なし、よく読めない小さな活字で印刷されている有害事項なしになるのだ。隠し立てをしない、消費者の金融音痴につけ込まない、従来のように必ず銀行が勝ってユーザが負けるゼロサムゲームでない、そんな金融業界を夢見ようではないか。オープンソースやSaaSも、最初は眉唾で見られ、こてんぱんにけなされたが、今ではどこの会社でも当たり前のように使っている。

金融業界はあまりにも長らく、反イノベーション的で反消費者的だったのだから、革命的オンライン企業たちは最初から完璧を目指す必要はない。そしてそこに、利益機会がある。たとえばすでにオンラインの金融サービスを2社も作って売った経験を持つCasaresによれば、デジタルの送金コストはかぎりなくゼロに近いのに、銀行は知らん顔をして高額な手数料を取っている。従来の電話会社の態度も同じだ。モバイルが価格破壊をやる前は、別の州にかける電話はべらぼーに高かったのだ。

彼らを支える投資家たちは、資金量豊富で評価も高いKhosla Ventures、Charles River Ventures、Greylock Partners、Accel Partners、Marc Andreessen、Sequoia Capital、Evan Williams、Balderton Capital、Lightspeed Venture Partners、そしてDAG Venturesだ。Wongaなどなどに対する彼らの投資総額は$80M(8000万ドル)だが、将来性に対してはまだまだ小額だ。たとえばkaChingの管理資産が$10B(100億ドル)になれば、年商は$100M(1億ドル)にはなるだろう。しかもミューチャルファンドのトップ100社の総資産は$11T(11兆ドル)だから、$10B(100億ドル)なんか微々たるものだ。もっと言えば、Squareの評価額は今すでに、これらの企業のこれまでの調達総額の半分に達しているのだ。

そしてそこから、今回のいちばん重要なお話が出てくる: これらの新しい金融サービス企業はどこも、短期的な転売等を考えていない。長く続いて、大きくなることを志向している。今のWeb世界では珍しいことだ。数週間前にCasaresのトップは、会社を売るのは起業家としての“失敗”だと述べた。だから、状況がよほど悪くならないかぎり、三度目はないだろう。Errol Damelin(WongaのCEO)は、サラ金を何年も研究してからWongaを始めたが、それまでにすでに数社を売っているにもかかわらず、Wongaだけはちゃんと育てて大きくしたいと考えている。また、SquareのファウンダJack Dorseyは今すでに、Twitterの第二の個人大株主だ。株はキャッシュではないが、彼の財務状況は将来的にも安泰と見てよいだろう。Squareで彼は、自分のビッグアイデアは一つだけではないことを証明したかった。さらに、起業家としては古参のPhilip Kaplanは、Charles River Venturesの正社員起業家という気楽な身分を捨てて、Blippyに飛びついた。真剣に、将来性が大きいと判断したからだ。

しかし、中でもいちばん売りそうもないのがkaChingだ。CEOのAndy RachleffとファウンダのDan Carrollに先週会った。Rachleff(Benchmark CapitalのファウンダとしてeBayの黄金時代を築いた)は大金を稼ぎ、スタンフォードの先生になりたがっていた。しかし彼はその夢を捨ててkaChingのCEOになったのだから、それを数百万ドルぐらいで売る気はない。彼は、kaChingから給料ももらってない。彼はMint(ここもBenchmarkが投資)について、あんなに早く売っちゃってがっかりだ、と言った。そしてこう明言した: ぜいたくな半引退生活を捨てて会社を作るということは、その会社を大きな公開企業にしたいからだ(下のビデオの6:09分あたりで、MintのファウンダAaron PatzerがRachleffの見解について述べている。Patzerは先週、NBCのPress:Hereに出ていた。番組全篇は、ここで)。

最近は急に、金融系のスタートアップが気になる存在になったようだ。Webのビリオンダラー企業を作る第一歩は、良いチーム。第二歩は良い製品。第三歩は市場機会。そしてとくに重要な第四歩は、安易な金の誘惑に対して“ノー”と言うことだ。シリコンバレーではだいたい10年に5社ぐらい、数十億ドル規模の公開企業が生まれている。2010年代には、その中の少なくとも1社が金融企業になるだろう…やっと。

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