【橘玲】世界がタックスヘイヴンになる日
世界がタックスヘイヴンになる日
例によって、橘玲氏の文章。これを読むと「プライベートバンクなど幻想に過ぎない」ことがよくわかるのではないか?わが勤務先にとって、耳の痛い話であるが(笑)。
(気になった部分引用)
国境を越えた資本移動が自由であれば、高率の資産課税はキャピタルフライト(資本逃避)を引き起こすだけだ。そのため多くの国で、金融資産に対する課税が軽減されている。日本も例外ではなく、株式の譲渡益は20パーセントの源泉分離課税が原則だが、「株価対策」を名目に03年に10パーセントに引き下げられたままだ(配当にも同様の軽減税率が適用されている)。
贈与税・相続税のない国が存在する以上、年金や健康保険などの社会保障に依存する必要のない超富裕層は、移住や国籍離脱で容易に課税を回避できる。この矛盾を正そうとすれば、同様に課税を廃止するか、税率を下げるほかない。
タックスヘイヴンがごく一部の権力者や富裕層だけのものであった時代には、娯楽映画やスパイ小説の題材にしかならなかった。それが政治問題化したのは、大国の政策を左右するところまで影響力が拡大したからだ。
タックスヘイヴンとは、主権を利用した国家ビジネスである。税務情報の交換や租税条約改定は、こうした国々の存在を国際社会が公認することになる。一定の制約を代償に生存権と正当性を獲得するのは、彼らにとっても不利な取引ではないだろう。
世界の国々はいま、増税の選択肢を封じられたまま、景気対策の名の下に巨額の財政赤字を積み上げている。
皮肉なことに、タックスヘイヴンを排斥しようとすればするほど、世界はタックスヘイヴンに近づいていくのである。
(引用終わり)