【再掲シリーズ】【入門編】フラクタルやブラックスワンを考える


(旧ブログから移籍してしばらく経つが、残念ながらヤフーブログから記事を一括で移動させる術はなさそうなので、「後々も参照するかも知れないもの」について、時折こちらに移しておこうと思う。それらを、【再掲シリーズ】として掲示する。なお、転記の際にリンクや多少の文章の改変は行う所存)


私の近所は中層のマンションが建ち並んでいる地域だ。歩道には街路樹が植林されている。

写真を見ていただきたい。人間の人工構造物であるマンションは、多少の外見の違いはあっても、概ね直線的で画一的なデザインだ。

これに対して、自然の創造物である木はどうであろうか。葉の一枚一枚、枝の一本一本、どれもが異なった形をしているのだろうし、また苗木の段階から木としての最終形(ないし現在形)を予測するのは、きわめて困難(というよりほとんど不可能)なことだろう。

非常に乱暴な言い方をすれば、「木」がどう育つかを考えるような幾何学が、フラクタル幾何学ということになるのだろう。

フラクタル幾何学の権威である数学者のマンデルブロは、「数学の世界ではフラクタルで考えるのが当たり前なのに、経済学や金融工学ではなぜかそれが採用されてない。」ことに疑問を感じて、経済学の世界に飛び込んできた人だ。

つまり、いまある経済学や金融工学の理論的背景となっている数学や物理学は、古すぎて使い物にならないのだ。池田信夫氏あたりは、現在の経済学は300年前の物理学を基にしており、時代遅れだと断定している。

だから、投資に失敗しないはずのヘッジファンドが失敗したり、「これなら分散投資ができており、まちがいない」と作ったはずの投信などの金融商品が大幅な損失を計上するような事態がおきるのだと考えるのが妥当なのだろう。

フラクタル幾何学的に考えれば、「市場の変動は参加者が予想している以上に大きくなるのが当然」なわけで、今回のサブプライム危機でまさにそれが具現化したのだろう。数学者にしてオプショントレーダーであるタレブは、そのようなまれにしか起きないことを「ブラックスワン」と呼び、ブラックスワンを考慮に入れた投資をすべきなのにほとんどの投資家はそうしていない、と警告するのだ。

残念ながら、マンデルブロによればフラクタル幾何学を考慮に入れた経済学の確立には、なお数十年はかかるという話だ。

その時が来るまで、投資家は自らの判断のみを信じて、投資をすべき時代が続くのだろう。

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