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【レビューNo.1575】蘇る翼 F-2B

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評価 ★★★ ヒゲの隊長こと佐藤外務副大臣が少し前に本書の存在を Facebook で投稿していたが、本書は東日本大震災で津波の直撃を受けた航空自衛隊松島基地とそこに所属していた F-2 戦闘機隊の再建の物語である。 世界でも類例を見ないという津波で海水(というより汚泥塩水)を被った戦闘機を復元する作業。電子機器の塊である現代の最新鋭戦闘機をかような状況から復元するのは、当初は到底不可能と思われたが、現場の基地隊員、製造メーカー、エンジンメーカー、そして本書ではあまり触れられてないが佐藤副大臣(当時は野党の一議員に過ぎない)の政治家としての奮闘もあって、前例のないプロジェクトがスタート。その道のりは、まさに日本のお家芸である現場力の発揮そのものであることが、詳らかにされている。 タレブの近著の反脆弱性に「現場でのティンカーリング(いじくり回し)が大事なのであって、理論や理屈は大事ではない」という話が出てくるが、まさにそれを彷彿とさせる事例がここにある。 もしも、このプロジェクトが首尾よく完遂されてなかったら、今の緊迫する日本の安全保障上に大きな穴が空いていたであろうと思われるだけに、携わった全ての関係者に素直に敬意を表したいと思う。

【レビューNo.1574】幸福の「資本」論

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評価 ★★★ 例によって橘玲氏ワールドの書。 私の様に初期からの著者の読者にとって、著者の言動はある種宗教みたいなものになっているので、本来的には本書を私がレビューするのはもはや適切では無いのかも知れない。 そう思いつつも書くが、何時もながら著者の発想には感心させられる。今回は人を金融資本(要は貯金)、人的資本(要は給料をいくら稼げるか)、社会資本(友達の多さなど)の 3 つの側面からとらえようというトライアルな訳だが、この区分けで行くと、いわゆるマイルドヤンキーの人たちがお金(金融資本)が乏しくても、友達という社会資本と最低限かも知れないが生活には困らない程度には稼ぐことができる人的資本によって、幸せであると著者は本書で説く。 逆に、お金持ち(金融資本が豊富)であっても、人的資本が無く(働くことをやめたないし老齢より働くことができない)、社会資本も乏しい(お金持ちはそれが故に友達は少なくなるであろうとの著者の見立て)と容易に不幸になると言う。確かにそういう人は、評者の周りに多く存在している。 著者の過去の著書に比べると、お金(金融資本)について言及しているところが極めて少ないのが、本書の特徴だろう。その理由として著者は「マイナス金利によって、金融資本を増やすことが極めて困難になり、逆に給料など定期的な収入のあること(人的資本)が極めて重要な世の中に変わったのだ。」と説く。 わかりやすく書けば、マイナス金利の時代では、年収 3 百万円の若者の人的資本価値は、著者の見立てだと約 3 億円に達すると言うのだ。 年金問題とて、元は長すぎる老後問題なので、少額であっても定期的な収入を得る人的資本をキープすることが極めて重要だと言う。 という、普通の人には理解しづらい理屈の書だが、読んでおいて損は無いとだけは言っておこう。

【レビューNo.1573】日米同盟のリアリズム

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評価 ★★★★ 長年軍事評論家として活躍してこられた著者は、昨今は Facebook などの SNS でもお馴染みの存在であり、その安定感ある投稿内容はやはり余人をもって代え難いものを感じることがある。 本書冒頭で著者は、経済合理性からして日米同盟は日本からも米側らからもその離脱は著しい損失(書中には具体的な金額が記載されているがここでは割愛)を余儀なくされ、中でも米国は日米同盟解消となれば、世界の超大国の座を滑り落ちることになると言う。 そのことを理解しない上で、対北朝鮮、対中国(尖閣問題など)を論じても仕方がないと言うことなのだろう。昨今の北朝鮮危機とも思える事態に対して、著者の Facebook などでの投稿内容はやや楽観的では?も思ったこともあったが、本書を読んでようやく理解ができた気がする。 「中国の空母が使い物にならない」という話は元 NHK の日高氏の本にもよく出てくるネタであったが、著者の解説を聞くとその理由が明快にわかる。 現時点の東アジア情勢理解のために、読んで損は無い一冊と思う。

【まとめてレビューせずNo.1555〜1572】

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夏休み中に読んだり聞いたりしたものをアイコンのみにて失礼。 この内、フィッシャー=ディースカウとバーンスタイン(P)によるマーラー歌曲集は★4つ。あとは★3つくらいでしょうか。

【レビューNo.1554】モーツァルト:歌劇「魔笛」

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評価★★★ 先日NHK交響楽団にコープマンが指揮者として登場しオールモーツアルトプログラムで演奏会を行うことを直前で知り、あわてて当日NHKホールに出かけた。幸い、チケットには余裕がありこの貴重な機会をものにすることができた。 その演奏会の冒頭がこの「魔笛」の序曲だった。 帰宅して調べてみると、コープマンによる魔笛全曲盤のCDがあると知り、聞いてみることにしたのがこの盤である。 日本での販売はつい最近の2015年に行われたようだが、録音自体は30年ほど前に行われたもののようだ。当然、古楽器による演奏で録音もかなりデッドな音響であり、一般的なオペラのイメージとはほど遠い。どこか芝居小屋でやっているような感じがしないでもない、しかし、聞き慣れてくると悪くはない。 モーツアルトが存命の頃は、この様な演奏だったのだろうかと思うと、感慨深いものもある。

【レビューNo.1553】KINZAI Financial Plan 389(2017.7月号) 特集:暮らしの不動産Q&A

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評価★★★ 今月のきんざいフィナンシャルの特集は不動産。とは言え、不動産が上がるだの下がるだのの下世話な話題は皆無で、徹頭徹尾FP1級保有者のスキル維持に資する専門的な内容の記事が、嫌というほど続く。まあ、不動産分野については本号を持っていれば、たいがいの質問には答えられるだろう。そういう意味ではお買い得かも知れない。

【レビューNo.1552】世界史を創ったビジネスモデル

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評価 ★★★★★ 野口悠紀雄先生ならではの学際的ワールドが炸裂した快作と評価したい。 当時の受験生であれば当然だったが、評者は大学受験で世界史を回避していたこともあり古代ローマ史について、これまでとんと興味がわかなかった。わずかに近年映画化されたテルマエロマエでハドリアヌス帝と言う人が居るのか?というくらいの認識だった。だから、世界史が苦手だという方には、とりわけ本書の一読をお薦めしたい。 評者は、そもそもローマ帝国が(最大で) 1500 年も続いたことも知らなかったし、ローマ時代のコンクリートが 1000 年を超える耐久性があり一部は今でも使われていることも知らなかったし、ローマ帝国の皇帝はほとんどが世襲でなかった(逆に世襲の時に劣悪な時代となった)ことも知らなかった。そして、属州出身の皇帝すらいたことも知らなかった。 では、なぜ今回これまでまったく興味のなかった世界史をテーマとしたこの本を読みきることができたのか。それは著者が書いているように、本書が「歴史を学ぶ」のではなく「歴史に学ぶ」という目線で書かれているからであろう。 本書には今述べたローマ帝国の歴史に加えて大航海時代の無敵艦隊撃破までと現代における情報革命とが、書かれている。一見すると何の脈絡も無さそうであるが、著者は情報革命の時代に学ぶべきは、ローマ帝国ないし大航海時代の市場を重視したビジネスモデルなのだと言う。 著者は本書の概念を要約すると「多様性の確保」と「フロンティアの確保」だと言う。本書を読んでみて評者流の下品な言い方で表現するならば、それは「寛容」と「カネ」となるのだろう。ただ、ローマ帝国のとてつもない金持ちたちは社会還元(都市のインフラ整備などはほとんど個人の慈善事業として行われた)も凄まじい勢いで行なっていたことは覚えておいたほうがいい。それは現代の日本の老人たちが、金融資産を(主として預金で)囲い込んでしまっていることの真逆の様に評者には見えた。