【レビュー№1791】花は咲けども 噺せども

 

花は咲けども 噺せども

評価★★★★


毎度申し上げている通り、評者は作者である立川談慶師匠と学生時代の同期同窓(同じゼミ)である。私は名前だけのゼミ代で、ゼミのみんなには、ほんと迷惑な存在だったかと思う。そんなゼミの一員として、落語研究会で活躍する作者が居た。卒業後、ワコールに就職したと聞いていたが、それから幾年かして、「立川ワコール(当時)」と言う名の落語家になったと風の便りに聞いて驚いたのが昨日のことの様な気がする。

その後の長きにわたる研鑽が身を結び、塾員(慶應義塾大学卒業者を意味するテクニカルターム)として史上初の真打ち落語家となった(その辺りの経緯はかつてご紹介した作者のデビュー作に詳しい。なお、こちらも面白いのでご一読をオススメする。)。

同期同窓なので、同じように歳を重ねて行く作者の今回の小説家としてのデビュー作を読むと、かつての著作やFacebook上で聞いたあれやこれやの話を思い出して感慨深い。もっとも作者は「これはフィクションだよ」と念押ししていたが。

とにもかくにも落語家の方の作品なので、大笑いと大泣きが交互に襲ってきて読んでいてこれほど楽しいことはない。コロナ禍で我々から奪われた色々なものを、小説の世界で取り戻してくれる作者の小説家としての筆致は、失礼ながら私の予想に反して素晴らしいものだった。これも、「長すぎた前座時代」のコツコツがもたらしたご褒美なのだとしたら、なんと人生とは難しいものだろうか。

まあ、私のこんな駄文を読んでる暇があったら書店かAmazonで本書を買って読むことを強くお薦めする。人が生きることが、いかに愛おしく、そして笑いと涙に満ちたものであるか、コロナ禍でいつのまにか失いかけていたものを思い出させてくれる。お節介なほどの怪力で、背中を押してくれる感がある(作者は落語界随一の筋トレマニアであるwww)。

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